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相続2(東京高裁平成23年9月21日)

未分割遺産(土地)の競売代金の分配を受けられなかったものに対して法廷相続分の割合でされた譲渡所得税の課税処分が適法とされた事例(東京高裁平成23年9月21日)

【事案】
遺贈により相続人の一部であるA,B,Cが土地1を取得した後,遺産分割調停が整わなかったため,遺産分割が審判に移行した。中間審判で,土地1が競売に出され,最終的な審判でCのみが土地1の売却代金及び土地2を単独で取得し,代償金については,Ⅽから,ABを含む相続人全員に対して相続分に応じて支払われた。Aがその年の所得税について,申告すべき譲渡所得税がないと考え,確定申告書を提出しなかったのに対し,Y税務署長は,Aに対し,土地1の競売による譲渡所得について,Aの法定相続分に基づき,所得税及び無申告課税を課す処分を行った。
これに対し,Aは,共同相続人間で分配が確定していない相続財産については,所得割合が確定し,現に分配を受けた額に応じて課税すべきである,Aは,共有持分相当の分配金を得ることができなかったのであるから,Aに課税することは実質所得者課税の原則に反するとして異議申し立てをしたところ,却下された。Aの相続人xが,Yに対し,上記所得税及び無申告課税を課す処分の取消しを求めて提訴した。

【判決内容】
・譲渡所得の本質は所有資産の価値の増加益であって,譲渡所得による課税は,資産が譲渡によって所有者の手を離れるのを機会に,その所有期間中の増加益をてして,課税するものである。
・所得税法が収入金額の計算について「収入すべき金額による」(36条1項)と定めていることからすると,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,その時点の属する粘土の課税所得を計算すべきものと解されるから,本件においては,土地1の競落人Dが売却代金をA,B,Cに納付し,土地1の所有権がDに移転した時点において,本件売却により増加益が発生し,その時点で,共有者であったAにも増加益が発生したものである


・本件においても,審判前の時点で,Aに具体的相続分がないことや遺産を取得しえないことが確定していたわけではないことから,土地1のAの法定相続分に基づき,Aに対して課税することが実質所得者課税の原則に反するとはいえない。

土地1の売却代金について,遺産分割審判によって,実際に法定相続分を取得できなくても,法定相続分に基づく課税が認容されてしまうということですね。

譲渡所得の考え方に関し,とても参考になる裁判例です。