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株主総会決議の瑕疵1(東京高等裁判所平成27年3月12日判決)

今日は、株主総会の追認決議の遡及効を否定し、全部取得決議取消の訴え利益を認めた判例についてみていきましょう。

東京高等裁判所平成27年3月12日判決

【事案の概要】

本件は、平成25年6月28日に開催されたY社の定時株主総会における①全部取得条項付種類株式制度を利用したスクイズアウトの件を可決する決議ならびに②同日開催の種類株主総会における全部取得条項付種類株式制度を利用したスクイズアウトの件を可決する旨の決議について、株主Xらが株主総会決議の取消等を求めた事案である。

原審は、②の決議の取消しを求める部分を認容した。

Xら、Y社双方が控訴した。なお、平成26年7月4日、Y社は、臨時株主総会及び普通株主による種類株主総会を開催し、①・②の決議を追認する旨の各可決の決議をした。そこで、Y社は、②の決議の訴えの利益が消滅した旨しゅちょうしている。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 株主総会決議の効力を遡及させることによって、法令により保護されている関係者の手続上の権利利益が害されるときは、その  遡及的効力を認めることはできない。

2 平成25年6月28日時点で普通株式を有する種類株主は、本来、全ての普通株式に全部取得条項を付ける定款変更をするか否かの意思決定ができるほかに、仮に採決によって自己の意見が通らなかったとしても、全部取得決議による取得日までの間に、自己の保有する株式を他に譲渡したり、裁判所に価格の決定を申し立てるなどの手続きをすることが出来たところ、取得日とされる日よりも後に行われた決議によって遡って当該種類株式に全部取得条項を付加する定款変更を承認することは、これらの反対株主等の手続保障を奪うことになる。したがって、本件において、本件第2回種類株主総会決議が開催された平成25年6月28日時点の株主と、本件再株主総会開催時点での株主が全く同一であるとか、平成25年6月28日時点での全ての本件種類株主に全部取得条項付き種類株式の取得に関する決定に係る手続保障が尽くされていたことが認められるとかの特別の事情がない限り、本件再株主総会決議の効力を本件第2回種類株主総会決議の日まで遡及させることはできない。

判例は、反対株主の権利行使の機会を保護するために全部取得条項付種類株式の取得に関する追認決議の効力を遡及させないというとても判り易く、説得的な立場に立っています。