弁護士の鈴木です。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、2019年は相続法が大きく変わり始める年です。
改正法の中には、今後の実務に大きく影響するような内容も少なくありません。
そこで、当ブログでは、今日から複数回にわたり、改正相続法のポイントを簡単に整理していきたいと思います。
「勉強したいんだけど、じっくり本を読んでいる時間が取れない…」
といった方は是非ご活用ください。
さて、第1回は配偶者居住権について解説します。
【どんな制度?】
配偶者居住権とは、今回の法改正で作り出された新しい権利で、亡くなった方(被相続人)の建物に住んでいた配偶者が今後も無償で居住し続けられるというものです。
権利の内容としては賃借権に近いですが、配偶者居住権を第三者に譲渡することはできません。
配偶者居住権の存続期間は、遺言や遺産分割などにおいて特段の定めがなければ終身となります。
この配偶者居住権を発生させる方法としては、
- 遺言によって配偶者に与える(遺産分割方法を指定する または 遺贈する)
- 遺産分割協議によって相続人同士で合意する
- 遺産分割調停や審判による取得(ただし、一定の要件をクリアーしている必要があります)
という3つがあります。
この配偶者居住権ですが、対象建物が配偶者以外の第三者との共有であるときには発生しません。
配偶者居住権はそれ自体が一つの相続財産として扱われます。
分かりやすく言えば、配偶者居住権を取得した配偶者は、対象建物における価値の一部を相続したということになります。
なお、婚姻期間が20年以上のご夫婦間で、配偶者居住権の遺贈がなされた場合、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
【この制度のメリットは?】
配偶者居住権を活用することで、より配偶者の生活に配慮した相続が可能となります。
とりわけ高齢者の方の場合、配偶者の死亡後に住み慣れた家屋敷を転居することは非常に負担です。
そのため、遺産分割の案件でも、家屋敷については配偶者が取得するケースが少なくありません。
ところが、不動産に相当の評価が付いてしまう場合、家屋敷を取得するだけで配偶者の相続分がなくなってしまうことがあり得ます。
そうなると、配偶者としては預貯金等の流動資産を得ることができず、今後の生活への不安が残ってしまうのです。
たとえば、被相続人である夫Xが死亡し、妻Aと息子Bが相続人だったとします。
Xの遺産は、①3000万円の自宅、②預金3000万円です。
このケースでは、AとBの法定相続分は各2分の1ですから、Aが自宅を取得してしまえば預金を得ることはできません。
しかし、Aの希望が自宅に居住することだとすれば、必ずしも3000万円の所有権そのものが必要なわけではありません。
そこで、3000万円の自宅につき、その所有権をBに与えつつ、配偶者居住権をAに与えるというわけです。
仮にこのケースでの配偶者居住権が2000万円だとすれば、Aは自宅への居住権に加え、預金のうち1000万円を取得することが可能になります。
【いつから施行されるか?】
配偶者居住権に係る改正法については、2020年4月1日から施行となります。
相続についてのご相談も、浜松市の鈴木・大和田法律事務所にお任せください。