静岡県浜松市の女性弁護士、大和田彩です。
当事務所では、地域の企業の顧問業務その他の企業法務を中心的業務として取り扱っています。そこで、中小企業の法務部や総務、人事に携わっている方に向けて、役立つ情報を提供していけたらと考えております。
今回は、中小企業様よりご相談を受けることが多い、従業員への減給処分について解説します。
【就業規則を確認!】
横領、背任行為、ハラスメント行為等の問題行為を起こしてしまった従業員の方に対して減給処分を科すためには、就業規則の懲戒処分として、減給処分についての定めが必要です。また、従業員の当該行為が就業規則上の懲戒事由に該当し、客観的に合理的な理由があると認められなければなりません。
減給処分を検討している企業の方は、まずは、御社の就業規則の記載内容を確認してみましょう。
【減給処分の相当性】
減給処分は、理由とされた当該行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当と認められない場合には無効となります。
減給処分を行う場合、それが行った行為に対して重きに失しないか、十分に検討する必要がありますね。
また、手段の相当性として、処分にあたって、本人に弁明の機会を与えるということも重要になります。
【減給処分の限界!】
減給処分をすることができるとして、減給額には限界があります。
減給限度額=平均賃金(月給制の場合、1日分の給与額)×1/2
そして、1回の問題行動に対して、減給処分を行えるのは、1回だけです。 月給制の従業員が1か月の間に複数回問題行動を起こしたような場合、2回以上減給処分をする場合は、「1日分の給与額の半額 × 減給処分の回数」がその月の月給からの減給の限度額になります。
ただし、1ヶ月に複数回の減給処分をする場合でも、1ヶ月あたりの減給額の合計が、月給額の10分の1を超えることはできません。
実際に可能な減給額は、ご想像よりかなり少額であるかと思います。ニュース等で半年間の減給など聞きますが、これは役員報酬のカットの場合であり、従業員に対して同じことを行うと、違法となってしまいます。
このように、減給幅は少額ですが、いきなり解雇という法的リスクの大きい処分は違法となる可能性が高いため、まずは、その前段階として、けん責・戒告、減給処分という方法をとることが考えられます。
減給処分などの懲戒処分を行う場合、その適法性の吟味には、非常に繊細な判断が要求されますし、それが違法となってしまった場合のペナルティーも決して軽くはありません。
ご心配であれば、一度企業法務に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。