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浜松の弁護士による会社のための法務教室⑤ 退職する従業員に対する研修費返還請求

静岡県浜松市の女性弁護士、大和田彩です。
鈴木・大和田法律事務所では、地域の企業の顧問業務その他の企業法務を中心的業務として取り扱っております。そこで、中小企業の法務部や総務、人事に携わっている方に向けて、役立つ情報を提供していけたらと考えております。
今回は、日頃、顧問先企業様よりご相談を受ける機会の多い、退職時における従業員の研修費用の返還請求について解説します。

従業員の研修費用を会社が支払ったにもかかわらず、従業員が研修を受けてすぐに退職してしまうようなことがあると会社は困ってしまいます。そこで、研修後、○年以内に退職した場合、研修費を返還するなどという取り扱いをすることがあります。特に、海外研修などの費用は会社にとって安くない負担になるので、従業員の研修費用を立て替えた会社としては、返還してほしいところですよね。

このような取り扱いは、労働基準法16条(使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない)との関係で認められるかが問題となります。

従業員に対する研修費用の返還請求が認められるかについては、裁判例上も判断が分かれているところですが、①退職の際の返還について就業規則等で合理的で明確な規定が存在し、②自主的かつ自由な意思での研修の参加であったといえれば、適法とされることが多い傾向にあるように思います。

ですので、裁判例上においても、例えば、研修自体に業務性が認められるような場合(研修時に会社の指揮監督下にあるような場合)や、一般の社員教育と同じような研修の場合には、自由な意思での研修への参加であったとは言いがたく、研修費の返還請求が認められづらい傾向にあるといえます。

そのため、会社としては、従業員への研修費の返還請求の適法性が認められるためには、就業規則等に①の規定を設けておくこと、②①に基づく自由な意思による自発的な研修であるということについてきちんとした合意書等を取っておくことが重要になってくると思います。

退職時における従業員の研修費用の返還請求には、このような繊細な判断と手続きが必要とされることから、ご検討されている企業様は、いちど企業法務に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

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