自己破産

自己破産とは

自己破産とは、借金の返済を断念し、その後の処理を裁判所に委ねる手続です。
破産では、①今ある財産をお金に換えて債権者に分配するための手続、②法的に借金を帳消しにする手続(「免責」といいます)が行われます。

任意整理や個人再生が借金の「減額」であるのに対し、自己破産において免責が許可されれば、(一部の例外を除き)そもそも借金を返す必要がなくなります。

「破産」と聞くと嫌なイメージを持つかもしれませんが、借金を全額免除できる点で、実は最も早くて確実な債務整理の方法といえます。

自己破産に向いている人

次の事項に当てはまる方は、自己破産を検討した方が良いと考えられます。

  • 今の借入残額を3年間(36回払い)で支払うことが難しい
  • 自宅不動産を所有していない
    または、手放しても構わない
  • 過去7年以内に破産歴がない
  • 資格制限に該当する職業に就いていない
    または、転職が可能
  • 免責不許可事由がない
    または、その程度が重大でない

任意整理か破産かの選択
今の借入残高を3年間で完済できる方は、任意整理(または個人再生)が向いています。
任意整理か破産かを選択するには、自身の支払能力を客観的に評価してもらう必要があります。支払能力は、①借入残高、②収入・支出の見通し、③家族構成、④年齢、⑤健康状態、⑥親族からの援助の有無といった要素から判断されますが、こうした判断を自分自身で行うことは簡単ではありません。
債務整理の方針選択は、自身や家族の今後を大きく左右します。自己判断せず、まず弁護士にご相談ください。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットは次のとおりです。

  • 財産が没収されてしまう
  • 破産手続中、一定の職業に就けない(資格制限)
  • 官報で氏名・住所等が公告される
  • 管財事件の場合、手続終了まで郵便物が管財人に転送・管理される

資格制限の一例(詳しくはこちら

破産をしても、次のような財産は没収されません。
・通常の生活用品(衣服、寝具、台所用品、畳及び建具など)
・仕事に必須な道具・機材等
・祭祀に直接供するために欠くことのできない物(仏像や位牌など)
・小規模企業共済の共済金
・中小企業退職金共済の共済金
・生活保護、年金、失業給付等の受給権
・以下のうち合計99万円までの財産
①現金
②預貯金・積立金
③保険の解約返戻金
④自動車(所有権留保がないものに限る)
⑤敷金・保証金返還請求権
⑥退職金債権(支給見込額の1/8を基準とする)
⑦電話加入権
⑧回収済みの過払金
・破産手続開始決定後に取得した財産

免責が認められないケース

法律上、次のような事由(免責不許可事由)がある場合には、免責(借金の帳消し)が許可されないことになっています(破産法252条1項各号)。

  • 財産の隠匿、損壊、廉価処分など
  • ヤミ金からの借入れ、クレジットカードの現金化など
  • 義務がないのに特定の債務者を優遇する行為
  • 浪費やギャンブル
  • 申立日の1年前から破産開始決定日までの間に、支払不能にあるのを知りながらこれを偽って借入れ等をした場合
  • 裁判所の調査における説明拒否・虚偽説明

裁量免責による救済が可能
免責不許可事由がありそうな場合でも、免責を得る余地は十分にあります。
まず、免責不許可事由の法律上の定義は厳格であり、一見これに該当しそうでも、実際には免責不許可事由とまではいえないケースもあります。
次に、たとえ免責不許可事由に該当する場合でも、正直に事情を申告したり、生活再建の実績を示したりすることで、免責を許可してもらうことが可能です(これを「裁量免責」といいます)。
当事務所では、免責不許可事由がある方でも、十分な事前検討のうえで積極的に破産申立てを行い、その全件について裁量免責を実現しております(2024年9月時点)。

破産しても消えない債務

免責が許可された場合でも、次のような債権には免責の効力が及ばず、破産後も負債が残り続けることになります(非免責債権。破産法253条1項各号)。なお、財団債権、別除権、取戻権は、そもそも免責の対象とはならないため注意が必要です。

  • 租税等の請求権
  • 悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 故意または重過失による生命・身体に対する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 養育費、婚姻費用等の請求権
  • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権・預り金返還請求権
  • 債権者名簿に知りながら記載しなかった請求権
  • 罰金等の請求権

手続きの流れ

自己破産をご依頼いただいた時点で借金の返済等は全てストップとなります。各債権者には弁護士から通知を送り、以後の対応についても弁護士が引き受けます。

これまで返済に充てていたお金を手元に残せるようになったら、自身の生活再建を始めましょう。当事務所では、多くの債務整理案件を手掛けてきた経験に基づき、依頼人自身の収入の範囲内で家計をやりくりできるよう丁寧にアドバイスします。

自己破産をするということは「返済の当てがない」ということですから、新たな借入れはNGです。家賃や光熱費のクレジットカード払いにも注意してください。
また、自己破産に限らず、債務整理をすると信用情報機関に登録され(いわゆるブラックリスト)、手続き終了後も5年~10年の間は借入れをしたり、ローンを組んだりできなくなります。

借金の返済等ができなくなったことにより、担保になっている不動産(自宅など)や自動車が売却され、残債務に充てられます。自動車については、売却に先立ち債権者によって引き上げが行われ、この時点で依頼人の手から離れることになります。他方、自宅不動産については、売却手続きがある程度進むまでの間は居住が可能です。

弁護士報酬に加え、手続きに必要な収入印紙などの実費、裁判所に納めるための予納金が必要となります。これらの費用については分割でお預かりすることも可能です。

費用の積み立てが終わると、いよいよ裁判所に自己破産を申し立てます。
浜松市、湖西市、磐田市、袋井市にお住まいの方は静岡地方裁判所浜松支部に、掛川市、菊川市、周智郡森町、御前崎市の一部にお住まいの方は静岡地方裁判所掛川支部(弁護士による申立ての場合には、静岡地方裁判所浜松支部への申立ても可)に申立てを行うことになります。

申立ての後、不足資料の補充や形式的な不備の訂正(補正)が終わると、正式に破産手続が開始されます。
法律上、破産手続開始決定の時点で存在する財産は換金されて債権者への配当に充てられるのが原則ですが、今後の生活再建に必要な財産については合計99万円の限度で、必要最低限の財産は依頼人の手元に残すことが認められています(自由財産)。こうした自由財産の拡張に関する手続や、自由財産以外の財産の換価・配当、免責に関する調査といった事務については、裁判所から選任を受けた破産管財人という弁護士が執り行います。
破産者(依頼人)は、破産管財人による面談その他の調査に協力する義務があります。また、調査の一環として、破産手続が終わるまでの間、破産者宛の郵便物は破産管財人に転送されるようになるほか、裁判所の許可なく転居を行うことも禁止されます。
ただし、配当ための換価や自由財産の拡張を行うべき財産がなく、免責を妨げる事由もない案件については、破産管財人が選任されることなく破産手続が即時に終了します(同時廃止)。

破産管財人が選任される案件では、3か月前後の期間を目途に、関係者に手続きの進行状況を報告するために債権者集会という機会が設けられます。
債権者集会の欠席は基本的に許されませんが、個人の破産において債権者が集会に出てくることは稀で、多くのケースでは裁判所・破産管財人・破産者(依頼人)の三者間で簡単な報告をして終了しているのが実情です。問題のない案件であれば、1回の集会に要する時間は概ね10分程度です。
破産手続が終了すると、免責審尋という手続が実施されます。
免責審尋とは、負債を帳消しにするか否かを判断するため、裁判所が破産者(依頼人)を面接する手続きです。
案件が複雑でない場合、第1回の債権者集会にて破産手続が終了し(異時廃止)、そのまま免責審尋まで行われることも少なくありません。
なお、破産管財人が選任されない同時廃止の案件では免責審尋のみが実施されます。
この場合には、複数の破産者が大きな部屋に集められ、1人の裁判官が講義のような形式で免責審尋を行います。
なお、債権者集会や免責審尋には弁護士も同行しますのでご安心ください。

よくある質問

官報という機関紙に掲載されますが、一般の人が官報をチェックしていることは非常に珍しく、周囲に破産などが発覚する可能性は低いと考えます。また、破産の事実が住民票や戸籍に載ることもありません。

生活に必要な資産(現金・自動車・保険)などについては原則99万円まで保有することが可能です。
仕事についても一部の例外を除き、これまでどおり続けることが可能です。選挙権を失うこともありません。

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