遺留分侵害額請求

遺留分とは、一定の相続人に認められる、遺言や生前贈与によっても侵害されない最低限の権利のことをいいます。他の共同相続人に遺産の全てを相続させる旨の遺言など、自身に不利な遺言や生前贈与などがなされてしまった場合でも、遺留分侵害額請求権を行使することができる可能性があります。

浜松市で遺留分侵害額請求に詳しい弁護士をお探しなら、ぜひ当事務所にご相談ください。

取扱案件の一例

  • 自分以外の相続人に全てを相続させる旨の遺言があることが判明した。
  • 被相続人の生前に、他の相続人に対し、多額の贈与がなされていた可能性がある。
  • 被相続人が遺言を作成し、相続人以外の者に、包括遺贈をしていた。

弁護士よりひとこと

鈴木悠太弁護士

親族間の問題は、感情面などの要因により、当事者間では解決が難しいケースがあります。遺留分侵害額請求については請求期間が限られておりますので、速やかな法律相談をお勧めします。

大和田彩弁護士

税理士の資格を生かし、不動産や株式の価値評価に争いがある案件や、企業経営者の方の相続に関する遺留分案件についても積極的に扱っております。ぜひ一度ご相談ください。

遺留分権利者の範囲

遺留分侵害額請求権を行使できるのは、遺留分権利者及びその承継人です。
遺留分権利者とは、兄弟姉妹以外の相続人を指し(民法1042条1項)、具体的には以下に該当する者をいいます。

・配偶者
・直系卑属(子や孫など)
・直系尊属(直系卑属がいない場合)

遺留分侵害額請求の手順

1 請求の意思表示及び裁判外交渉

裁判以前の手続きとして、弁護士名で遺留分侵害額請求をする旨の内容証明郵便を送付し、弁護士と遺留分義務者との間で、遺留分義務者が相続した遺産情報の開示請求や、支払うべき価額に関する交渉を行います。
弁護士から送付した内容証明郵便を受け、先方が相当な額の支払いを合意した場合、支払い条件を定めた合意書を取り交わし、合意書のとおりの支払いを待つこととなります。この裁判以前の任意交渉は、どのような遺産があるか等によりますが、3ヶ月~半年ほどの期間を要しています。

2 調停

任意請求として内容証明郵便を送付したにもかかわらず遺留分義務者から返答がない場合や、遺留分義務者が遺産の情報開示をしない場合、先方から申し出られた条件(価額弁償の額)が当該案件を解決するに不相当な場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
遺留分侵害額請求調停の平均期間は1年~2年で、その間、月に1回ほど調停期日が開かれます。この間、弁護士に依頼している場合は弁護士のみが調停に出廷することも可能ですし、ご依頼者が弁護士と共に調停に出廷することも可能です。
遺留分侵害額請求の調停は、申立人である遺留分義務者と相手方である遺留分義務者が交互に調停室(小さな会議室のようなところ)に入り、2名の調停委員(弁護士や税理士などが調停委員になることもあります)が双方の事情を伺って、必要な事項について相手に伝えるという方法でのお話し合いがなされます。
このように、調停手続きは、家庭裁判所といっても、決してドラマで見るような法廷で行う訳ではありませんし、相手方と直接顔を合わせて議論を交わすような場ではありませんので、安心して臨んでください。
遺留分侵害額請求においては、調停委員や裁判官が意見を述べたり、両当事者に資料の提出を促したりすることがあるため、任意での交渉段階と比して、遺留分義務者からの遺産情報の開示可能性は高いといえます。

3 訴訟

遺産分割調停は不成立により終了すると審判手続に移行しますが、遺留分侵害額請求調停は審判に移行しないため、調停が不調となれば、改めて訴訟を提起しなければなりません。その際、遺留分侵害額請求訴訟の提起先は、管轄の地方裁判所又は簡易裁判所(家庭裁判所ではありません)となります。
遺留分侵害額請求訴訟の平均期間も調停と同程度の1年~2年で、月に1回ほど訴訟期日が開かれます。この間、弁護士に依頼している場合は弁護士のみが訴訟に出廷いたしますので、ご依頼者が出廷する必要はございません。
遺留分侵害額請求訴訟においては、相手方が財産を任意に開示しない場合に、調査嘱託などの裁判上の手続きを用いて、金融機関等から直接、資料の開示を得ることが可能となる場合があります。
遺留分侵害額請求訴訟においても、遺産やその価値について主張・立証がつきた当たりで、裁判所から和解案が出され、訴訟上の和解が成立することがあります。訴訟上の和解に至らない場合、裁判所が判決を下すことになります。

弁護士費用

遺留分算定の基礎となる財産の特定方法

全ての財産を相続させる旨の遺言や包括遺贈の遺言があり、具体的な相続財産が特定できていない案件では、被相続人がどのような財産を有していたかについて全くあたりがついていない場合があります。
そのような場合、不動産については名寄せ帳を取り寄せることで調査可能です。預金、株式等については、遺留分義務者に対し、相続税の申告書等を提出させる等の方法で、どの金融機関等に、どの程度の財産があるかを把握しましょう。
任意の交渉段階で、遺産の情報が得られない場合は、調停を申し立て、調停委員を通じて、相手方に、相続税の申告書や、そこに記載されている金融機関の取引履歴等の資料の提出を求めましょう。

不動産、株式等の価値について

遺留分侵害額請求における基礎財産の評価は、取引価格によって評価します。評価の基準時は、相続開始時の取引価格とするのが一般的です。このうち、不動産については、固定資産税評価額、路線価、公示価格、標準値価格などを参考に、取引価格を算定し、評価します。多くの場合、当事者双方が不動産業者の査定書等を提出し、不動産の評価額を立証します。それでも、両者が立証する価格に差がある場合には、裁判所が選任した不動産鑑定士による不動産鑑定を実施することがあります。

遺留分侵害額請求権の消滅時効に注意しましょう

遺留分侵害額請求権の時効は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年です。この期間を徒過してしまうと、遺留分侵害額請求権は時効により消滅してしまいます。また、遺留分侵害額請求権は、相続開始から10年という除斥期間も設けられています。
遺産を特定せずに、遺産のすべてを単独相続人に相続させる旨の遺言がある場合や、包括遺贈の遺言がある場合などでは、どのような遺産があったのか調査しなければわからない案件もあります。もっとも、具体的な遺産の額や遺留分侵害額がわからない状態でも、遺言によって財産が相続されたことさえわかれば、遺留分侵害額請求をすることが可能です。
被相続人が亡くなってから、葬儀や法事、税金の申告、相続財産の調査などで忙しくなってしまうこともありますが、遺留分という重要な権利を消滅させてしまわないように、早めに内容証明郵便などで、遺留分侵害額請求の意思表示をしておくことが重要です。

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