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不動産登記って何だろう?

弁護士の鈴木悠太です。

浜松市では遅咲きの桜も散り、いよいよ本格的に温かくなってきました。

 

今回の記事では、不動産関係の業務を行う際に重要な「登記」という制度(とくに「不動産登記」)について解説します。

「登記という言葉は知っているけど、どういう物か実はよく分からなくて…」という方は是非ご覧になってみてください。

 

1.不動産登記とは

 

登記とは、自然人や法人、不動産、債権などに関わる権利関係等を公に表示する(公示する)ための制度です。
なかでも不動産登記は、不動産(土地・建物)についてその現況及び権利関係を公示するためのものになります。

 

不動産登記簿を確認すれば、

  • 「対象の土地がどんな土地(宅地なのか農地なのか等)で、どのくらいの広さ(地積)か?」
  • 「対象の建物がどのような構造(木造かコンクリート造か、平屋か二階建てか等)で、どのくらいの広さ(床面積)で、どのような経過で建てられたか?」

といった当該不動産の物理的な状況が把握できます。

 

加えて、不動産登記簿には、「対象不動産について、誰が・いつ・どのような権利をどういった理由で取得または喪失したか」が記載されています。

 

不動産登記簿のうち、

  • 前者(不動産の物理的状況)に関する情報が記載されている部分を「表題部」
  • 後者(不動産の権利の得喪)に関する情報が記載されている部分を「権利部」

といいます。

 

 

なお、このうち権利部については、

  • 権利の中でも所有権に関する事項が記載される「甲区」
  • 所有権以外の権利(抵当権や地上権など)が記載される「乙区」

とがあります。

 

不動産登記簿は法務局において誰でも謄本を取得し、その内容を見ることができます(インターネット上での情報取得も可能です)。

 

私も案件で不動産を扱う際には、この不動産登記をもとに「この土地は現在○○さんの名義だな」「この不動産は××さんが担保に取っているな」といった情報を得ているわけです。

 

2.不動産登記の役割

 

不動産登記には、広く社会一般に不動産の情報を公示する役割があります。

これに加え、不動産登記は不動産の物権変動に係る第三者対抗要件(民法177条)という重要な機能があります。

 

不動産の情報を公示する不動産登記簿ですが、登記簿の情報は行政が勝手に更新してくれるわけではありません。

たとえば、AさんがBさんに土地を売った場合、権利部(甲区)について新しい情報(Bさんが土地を買って新しい所有権者になったこと)を載せるには、原則的として、AさんとBさんが共同して法務局に申請を行う必要があります。
つまり、たとえ対象土地についてA→Bという権利の移動があっても、所有権移転登記がされなければ登記簿上はAさんが所有権者として表示されてしまうことになるのです。

 

 

この点が問題となるのは、A・B間の土地売買があった後に、(Bさんの存在を秘密にして)Aさんが同じ土地をCさんに売ってしまった場合です(これを「二重譲渡」といいます)。

 

登記簿に記載がない以上、第三者が外からBさんの存在を知ることは困難です。
したがって、Cさんとしては、Aさんから「この土地は自分の物だ」と言われてしまえば、これを信じてしまったとしても致し方ないところがあります。

 

このようにして、1つの土地に対して権利を主張する者が複数現れてしまった場合、一体どちらが優先されるのでしょうか?

 

読者の皆様の中には、もしかすると「先にAから土地を買ったのはBなのだから、早い者勝ちでBを優先すべきだ」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、わが国の民法では、不動産に対する物権(所有権など)の変動については、「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定められています(177条)。

 

ここで「第三者に対抗する」とは、たとえば、BさんがCさんに対して「この土地は既に自分が買い、所有権の移転を受けている」と主張し、Cさんに土地の件を諦めてもらうこと等を指します。つまり、Bさんとしては「AB間の売買を理由とする所有権の移転」について登記をすることで、初めて当該所有権移転をCさんを含む「第三者」に主張することができる、というわけです。

逆をいえば、Bさんが登記をしないでいる間に、後から関わってきたCさんが「AC間の売買を理由とする所有権の移転」について登記をしてしまうと、Cさんとの関係でBさんは負けてしまうのです(あとは、このような事態を生じさせたAさんに対する損害賠償請求等の問題となります)。

 

なお、登記を備えていないBさんにおいても、民法177条の「第三者」に含まれない者に対しては、自己の土地所有権を対抗することが可能です。
たとえば、所有権移転の当事者であるAさんは、ここでいう「第三者」には該当しません。

 

この177条の「第三者」の解釈問題は民法を学ぶ人なら誰もが通る有名な論点ですが、詳細については割愛します。

 

 

このように、当事者間で成立した法律関係ないし権利関係を第三者に主張するための法律要件のことを「対抗要件」と呼びます。
そして、上記のとおり、不動産に関する物権変動については登記が対抗要件となります。