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弁護士が解説【法律豆知識】教えて!悠太先生『引っ越しの時、敷金が全く返ってこなかった。納得できないけどどうすればいい?』

こんにちは、事務スタッフのエリです。

春ですね、新生活がはじまりますね♪はい、引っ越しシーズン到来です。


マンション・アパートへ引っ越しする時によく聞く言葉「敷金」と「礼金」。礼金は大家さんへのお礼として支払っているので、戻ってこないことが多いというか、そのつもりで支払っていることが多いですよね。
が、問題は「敷金」です。退去時に部屋のクリーニング代を支払ったとしても、ある程度は返還されるだろうと思って期待しちゃいますよね♪


私も敷金は当然返ってくると思っていた一人です。

学生時代、横浜線沿いのワンルーム賃貸で一人暮らしをしていました。

契約時には敷金・礼金など、もろもろ支払い、3年半位そのマンションで生活した後に引っ越すことになったんですが、敷金は一切返ってきませんでした。

「え?返ってこないの?敷金ってそんなもの?」程度にしか考えておらず、大家さんや管理会社に問い合わせもしなかったんですが、親も「クリーニングって案外お金がかかるのね」で終了しました。。。

その後、都内で1年ちょっと一人暮らしした時は、金額は忘れましたが敷金が返ってきて「住んでた期間が短いから戻ってきたのかな」と感じたことを覚えています。

もちろん、どちらの場合もキレイに使っていたつもりです。壁紙を破ってしまったり、床に傷をつけたりなんてしていません!自炊もほとんどしていないので、キッチンまわりもピカピカです(笑)。退去時もできる限りキレイに掃除もしました。


戻ってきたり、戻ってこなかったり。実際に住んでいた期間も関係するの?

さて、敷金って一体どんなものなんでしょうか?


敷金について、悠太先生に教えてもらいましょう!

①そもそも、敷金ってどんなお金ですか?

賃貸借契約の終了時に、滞納賃料や建物に関する損害賠償債務を担保するために、賃借人から賃貸人に交付される金銭のことです。要は借りた人が負担する債務に充てられるお金です。

(令和2年の民法改正で622条の2が新設されました)

第六百二十二条の二

賃借人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ。賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。


いかなる名目を問わずとあるように、たとえ呼び方が「礼金」となっている場合でも、債務担保目的で交付される金銭であれば、民法上の敷金に該当します。

②敷金って、基本返ってくるものなのでしょうか?

滞納賃料等の控除後に残金があれば返ってきます。


③部屋はキレイに使っていたのに、どうして返ってこないんでしょうか?

トラブルになる代表的な例は、部屋の原状回復費用です。


賃借人には原状回復義務があります(民621条)。ただし、貸す前の状態に戻せと言うことではなく、通常損耗と経年劣化については義務を負いません。住んでいた期間の長い・短いについても関係ありません。

原状回復義務の範囲に食い違いがあるケースではトラブルになりがちです。

また、ハウスクリーニング費用を賃借人負担とする特約が入っていることがあります。これは本来賃貸人が負担すべき費用を契約によって賃借人に転嫁するものです。


最判平成17年12月6日(裁判集民218号1239頁)

建物の賃貸借において、賃借人に通常損耗についての原状回復義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかではない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補償特約」という)が明確に合意されていることが必要である


ハウスクリーニング特約については、賃借人に負担が転嫁されていることを理解させ、金額を明示し、業者が行うことを示す等が必要と考えられます。


④部屋を借りる時、退去する時に注意するポイントをそれぞれ教えてください

【借りる時】部屋全体を確認し、汚れや破損している部分があれば、管理会社に報告したり写真などを残しておくことをおすすめします。

【退去する時】原状回復費用の明細を確認することです。特約がある場合は、この点に対する明示・説明が十分であったのか、また前述の17年判例によって特約が有効とされる場合でも、消費者契約法10条や民法90条の問題はあります。悪質な場合は弁護士や消費生活センターに相談することをおすすめします。


⑤当たり前のようにサインしている契約書ですが、注意する点はありますか?

原状回復に関する特約の有無や内容についてはしっかりチェックしましょう。また退去の告知期間についても記載がある場合が多いので、そこも見ておいたほうがいいですね。


悠太先生、ありがとうございました。

私を含め、【原状回復=借りたときの姿】と思っている方、多いのではないでしょうか?

普通に使っている場合の汚れや経年劣化は、借りていた人が修理したり新しくする必要はなく、大家さんや管理会社が負担してくれるなんて知りませんでした!とっても勉強になりました。今度部屋を借りる機会があれば、ちゃんと契約書もチェックして特約の有無も確認します。もちろん退去時には敷金を何に使ったのかも、明細を出してもらいます!


当事務所では不動産に関するトラブルの相談にも応じております。

貸主・借主、どちらの方も対応可能です。お気軽にご相談ください。


次回は「4月から法改正があるとか?いまさらですけどパワハラ・モラハラについて教えてください」をテーマに悠太先生にいろいろ質問してみたいと思います!