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相続1(最判平成16年4月20日)

預金を遺産分割の範囲に含めるかに関して、判例変更の動きがあります。

今年の3月23日に、死亡した男性の遺族が男性名義の預金約3800万円について別の遺族が受けた生前贈与などと合わせて遺産分割するよう求めた審判案件が、最高裁判所大法廷に回付されています。

これまでの最高裁の判例では、「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される。」(最判平成16年4月20日)とされ、その後の裁判例でも、この判例に従い、遺産分割前であっても、相続人の金融機関に対する預金の払戻し請求が認容されてきました。

もっとも、実務上、金融機関は、相続人の1人が単独で預金の払い戻しを請求しても、任意では払い戻しに応じず、相続人全員の同意を要求する取り扱いをするのが通例でした。また、家庭裁判所のにおいても、預金債権について、遺産分割の当事者である相続人の合意がある場合には、遺産分割の対象に含めるという扱いをしています。

判例変更がなされると、実務に判例が近づくことになりますが、預金が遺産分割の対象に含まれるとされた場合、相続人が金融機関に払戻しを請求しても認められず、相続税の納税資金面の工面等に苦慮することが予想されます。

預金のみでなく、相続人に対して(生命保険などを利用し)即時利用可能な現金を遺しておくことがますます重要になります。