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すぐ読める!改正相続法のポイント~第5回 預貯金の払戻し制度の創設~

弁護士の鈴木悠太です。

改正相続法のポイント第5回は、預貯金の払戻しに関する新しい制度を解説します。

 

1.問題の所在

相続が発生した場合、各相続人は遺産分割が完了して初めて遺産を自由に処分できるのが原則です。

もっとも、現実問題として、遺産分割は未了だけれども被相続人名義の預貯金を引き出したいという場面があり得ます。
典型的には、被相続人の葬儀代を確保するためであったり、被相続人の負債を返済したりといったケースがそれです。

 

2.現行法の問題点

この問題を理解するのに必須の判例が、最大決平成28年12月19日(民集70巻8号2121頁)です。

この平成28年判例が出るまでの実務では、預貯金債権は相続発生により法定相続分に従って当然に分割されるものと考えられていました。
そのため、遺産分割が未了であっても、各相続人が単独で金融機関に対して預金の払戻請求を行うことが可能でした。

 

しかし、平成28年判例では、預貯金債権が遺産分割の対象に含まれるとされ、従来の取扱いが変更されるに至りました。
これにより、従来まで可能だった共同相続人単独での払戻請求ができなくなったのです。

 

もちろん、平成28年判例においても、相続人全員の同意があれば預金の払戻し自体は可能です。
しかし、親族間に感情的な対立があるケースにおいて、こうした同意を取付けることは必ずしも容易ではありません。

 

また、現行法においては、遺産分割調停等の申立てと併せて遺産の仮分割の仮処分を利用することで、遺産分割未了の預貯金を引き出す余地もあります。
しかし、この仮処分については要件が厳格であるため、使い勝手が良いものとはいえません。

 

3.どんな制度?

こうした問題に対処するため、改正相続法では、①上記保全処分の要件を緩和するとともに、②家庭裁判所を経ることなく金融機関の窓口で一定の範囲内で預貯金の払戻しを受けられる制度(民法909条の2)が新設されました。

 

この新制度(預貯金の払戻し制度)においては、

 

各金融機関における相続開始時点での預貯金債権額の3分の1 × 払戻しを行う共同相続人の法定相続分

 

が払戻しの対象金額となります。

 

ただし、法務省令により、各金融機関における払戻上限額は150万円までとされています。
ちなみに、この150万円という金額は、交通事故賠償における葬儀費用の基準と同額です。

 

なお、上記により払戻しを受けた預貯金については、払戻しをした共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなされます。

 

4.いつから施行されるか?

預貯金の払戻し制度については、2019年7月1日より施行されます。

浜松市周辺で相続問題についてお困りの際は、ぜひ鈴木・大和田法律事務所までご相談ください。

 

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