静岡県浜松市の女性弁護士、大和田彩です。
鈴木・大和田法律事務所では、地域の企業の顧問業務その他の企業法務を中心的業務として取り扱っております。そこで、中小企業の法務部や総務、人事に携わっている方に向けて、役立つ情報を提供していけたらと考えております。
今回は、日頃、顧問先企業様よりご相談を受ける機会の多い、従業員への損害賠償請求について解説します。
雇っている従業員の方が会社の備品を壊してしまった、社用車をこすってしまった、第三者をけがさせてしまって会社が弁償したというような場合、会社としては、その従業員の方に損害賠償請求をすることが考えられます。
このような場合、今日の実務では、従業員が故意又は重過失により会社に損害を与えた場合に限定して損害賠償義務を認める傾向にあります。すなわち、単なる軽過失の場合、従業員に対する損害賠償が認められない場合があるということです。理由としては、従業員を用いて利益を上げている会社と、従業員との間の公平性の観点からの制限といわれています。
また、この従業員に対する損害賠償請求権についても、前回の法務教室②で解説した労働基準法24条1項の賃金の全額払いの原則が適用されるため、会社からの一方的な相殺は違法となってしまいます。ここでもあくまで従業員の意思に基づくものとして、きちんと同意書面を取っておくなど、十分な注意が必要ですね。
このように、従業員に対する損害賠償請求は民法の原則よりも限定的になされているというのが現状です。
従業員に対する損害賠償請求の適法性についてご心配の企業様は、いちど企業法務に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。