静岡県浜松市の女性弁護士、大和田彩です。
鈴木・大和田法律事務所では、地域の企業の顧問業務その他の企業法務を中心的業務として取り扱っております。そこで、中小企業の法務部や総務、人事に携わっている方や取引担当者方方に向けて、役立つ情報を提供していけたらと考えております。
今回は、日頃、顧問先企業様よりご相談を受ける機会の多い、相殺による決済について注意すべき点を解説します。
会社が取引先に債権・債務を持っている場合、相殺によって簡易に決済したいと考えることがありますよね。
そんな簡易な決済方法としての相殺についても、下請事業者との関係で行う場合、下請法の規制がかかるため、注意が必要です。
まず、下請法の規制が及ぶのは、以下のような場合です。
(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
・親事業者が資本金3億円超、下請事業者(個人を含む)が資本金3億円以下の場合
・親事業者が資本金1千万円超、下請事業者(個人を含む)が資本金1千万円以下の場合
(2)情報成果物制作・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く)
・親事業者が資本金5千万円超、下請事業者(個人を含む)が資本金5千万円以下の場合
・親事業者が1千万円超5千万円以下、下請事業者(個人を含む)が資本金1千万円以下の場合
それでは、下請法の規制が及ぶ場合、相殺にどのような制限が加えられるのでしょうか。
親事業者が下請事業者の給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を有償で支給している場合に、下請事業者の責に帰すべき理由がないのにこの有償支給原材料等を用いて製造・修理した物品の下請代金の支払期日より早い時期に当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金と相殺することは禁止されています(下請代金支払遅延等防止法4条2項1号)。
ですから、親事業者の担当者は、決済時に十分な注意を行う必要がありますし、下請事業者の担当者も、下請法に反する決済がなされないよう、注意して契約交渉等を行う必要がありますね。
浜松市には製造業が多く、当事務所の顧問先様の取引にも、下請法の規制が及ぶことがあるため、顧問先様の契約書(取引基本契約書を含む)のチェックをする場合には、下請法に注意してチェックをしています。
このように、地元中小企業の取引には、下請法の規制がかかることが多々あります。ご心配の場合は、いちど企業法務に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。