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性行為がなければ「不貞」ではない?

夫婦間のトラブルで多いのは,やはり不倫関係です。配偶者の不倫に気付くきっかけは様々ですが,よくあるものとしては,最近外出・出張が増えた又は帰宅が遅くなった,配偶者の携帯に不倫相手へのメッセージを見つけてしまった等が挙げられます。

配偶者に不貞行為があった場合,裁判を通じて離婚を請求することができます(民法770条1項1号)。加えて,不貞行為は婚姻生活を侵害する不法行為(民法)に該当するため,配偶者や不貞相手に対する慰謝料請求も可能です。

法律的な意味での不貞行為とは,いわゆる性行為を指すのが一般的です。判例でも,民法770条1項1号の解釈において,不貞行為とは「配偶者のある者が,自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」と述べたものがあります(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。

しかし,性行為がない(または証明できない)からといって,必ずしも泣き寝入りする必要はありません。

1 性行為がなくても不貞行為と認められた例はある

宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日は,婚姻生活(本事例は,同性カップルについて内縁に準じた法的保護を認めており,この点でも画期的なものといえます)の侵害という側面を重視し,キスやペッティングが不貞行為に該当するとして,100万円の慰謝料を認めました。

また,東京地判平成29年9月26日では,「不貞行為とは,性交渉又はこれに類似する行為を指し」としながらも,性的関係に関するLINEのやりとりに対し,不貞行為に準ずるものとして,社会的に許容される範囲を逸脱するとして,慰謝料30万円を認めています。

ただし,上記裁判例に対しては賛否両論あり,「性行為がなくても慰謝料請求ができる」と一般化することは難しいと考えます。そのため,慰謝料請求にあたっては,相手との交際の内容・程度といった具体的な事実関係をよく検討することが必要です。

2 離婚原因は不貞行為だけではない

判例上,性行為が(証明でき)ないケースでは,民法770条1項1号に基づく離婚請求は困難といえます。


しかし,たとえ性行為がなかったとしても,配偶者の不倫(及びその他の事情)によって婚姻関係が破綻している場合には,民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして,離婚請求が認められる余地はあります。この場合,配偶者や不倫相手への慰謝料請求は難しい可能性がありますが,財産分与養育費・婚姻費用年金分割などによって,離婚(別居)後の生活資金を確保することも期待できます。

3 最後に

確かに,不貞行為=性行為というのが一般的な理解ではありますが,性行為が立証できなければ相手に何も言えないというわけではありません。配偶者の不倫でお悩みでしたら,ぜひ一度弁護士にご相談いただき,ご自身にどのような選択肢があるのかを知っていただければ幸いです。