同族会社に対する貸付金に対する課税に関する重要裁決です。
【事案の概要】
相続人である請求人が,相続の開始前に,自らが実質的に経営している同族会社における被相続人からの借入金の帳簿上の残高を,同社における価値のない資産等と相殺させることにより減少させる仕訳を行い,仕訳により減少させた後の帳簿上の借入金の残高を被相続人の同族会社に対する貸付金の額であるとして相続税の期限後申告をした後,貸付金の額に誤りがあったなどとして修正申告をしたところ,原処分庁が,請求人は,根拠となる私法上の行為が存在しない仕訳を故意に行ったとして重加算税の賦課決定処分をした。
請求人の仕訳は被相続人と協議のうえで行ったものであるから,事実を仮装したものではないとして,重加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税を超える部分の取り消しを求めた。
【結論】
賦課決定処分の一部取消し
【裁決の内容】
「請求人は,被相続人と協議していない旨の自らに不利な事実を認める答述もしており,仕訳ごとに区別して答述をしている様子が窺える等のことから,請求人と被相続人との間で請求人が答述するような協議があった可能性を十分に認めることができることを前提とすると,当該仕訳の一部は,被相続人からの借入金の額を減少させるという被相続人の意思に基づき行われた可能性が十分に認められることになり,そうすると,当該各仕訳に係る請求人の行為は,本件相続税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいし,不当に脱漏し,あるいは故意に歪曲したものであるとまでは認めることができない。」(平成27年10月1日公表裁決)
今回のような場合に,重加算税の賦課決定処分の取消しを認めてもらうためには,被相続人の意思に基づいた仕訳であることを立証できなくてはなりません。
納税者側がリスクを減らすためには,あらかじめ被相続人との協議内容を協議書等の書面に残しておくなどの対策が考えられます。