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租税1(東京地裁平成25年3月5日判決)

今日は,更正処分が無効であることの確認を求める訴えが、行政事件訴訟法36条の定める原告適格を欠く不適法なものであるとされた判例を見てみましょう。

東京地裁平成25年3月5日判決

【事案の概要】

本件は、X(原告)が、平成24年6月27日付けで、K税務署長から、Xの平成23年分の所得税につき、

〔1〕 勤務先からの給与収入及び企業年金連合会からの公的年金収入につき申告漏れがあること、
〔2〕雑所得の計算方法に誤りがあること、
〔3〕配偶者特別控除の適用に誤りがあること

を理由として更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて、以下「本件更正処分等」という。)を受けたことに対し、本件更正処分等には、所得税法その他の法令に違反する重大かつ明白な瑕疵があるなどと主張して、国Y(被告)に対して、本件更正処分(ただし、所得金額につき193万900円を、納付すべき税額につき7,500円を超える部分に限る。)及び本件賦課決定処分がいずれも無効であることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 行政事件訴訟法36条によれば、無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができると定められている。

Xは、本件更正処分等により確定した税金(本件所得税等)全額を既に納付済みであることが認められる。そうすると、Xは、今後、本件更正処分等に続く処分(滞納処分)により損害を受けるおそれはないということになるから、行政事件訴訟法36条が定める『当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者』に当たらないということができる。

2 課税処分を受けて当該処分に係る租税を納付した者は、当該課税処分が無効であることを前提として、直ちに上記納付済みの税金の不当利得返還請求訴訟を提起し、当該訴訟の中でその前提問題として課税処分の無効原因となる一切の瑕疵を主張して審理を受けることができ、かつ、これによって目的(課税処分の無効を前提として既に支払った租税の返還を求めること)を達することができる。そうすると、上記のとおり、本件更正処分等により確定した本件所得税等の全額を既に納付したXとしては、権利義務の主体である国Yを被告として、納付済みとなった本件所得税等の返還を求める不当利得返還請求訴訟を提起し、その訴訟の中で、本件更正処分等の無効原因を主張して争うべきであって、本件更正処分等の無効確認請求訴訟によってあらかじめ本件各更正処分等の無効を確認する確定判決を得ておかなければ上記不当利得の返還を請求することができないという関係にあるものではない。よって、Xは、行政事件訴訟法36条が定める『その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの』には当たらない。

国による課税処分について裁判でその無効を主張する場合,行政事件訴訟法36条が適用され,訴えの適法要件を満たすかが問題となります。このような場面では,特に慎重に訴訟物の選択をしなければなりません。