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【後払い現金化】の法的問題

最近、後払い現金化と呼ばれる取引に関する相談が増えているようです。

 

1.後払い現金化の仕組み

 

業者によって違いはあるようですが、概ね次のような仕組みと言われています。

①業者から商品を5万円前後で購入。ただし商品代金の支払は1ヶ月後という約定。

②前項の売買について、業者から買主に半額程度(たとえば3万円)を「キャッシュバック」として直ちに送金する。

③1ヶ月後、業者から買主に売買代金(たとえば5万円前後)を請求する。

 

 

2.何が問題なのか?

 

上記取引は形式的には売買契約なのですが、実質的には、3万円を受け取って1ヶ月に5万円を支払っていると見ることもできます。

 

貸金業者が3万円を貸し付ける場合、利息の上限は年20%です。これを超える利息は無効(利息制限法1条1号)となるほか、刑事罰の対象となります(出資法5条2項)。

3万円を30日後に5万円にして返す場合、その利息は年800%を超え、上記制限を大きく超過することになります。

 

もっとも、上記制限はあくまでお金の貸借りに適用されるものであり、売買代契約に基づいて代金を請求するのであれば問題ないのでは?との意見もあろうかと思います。

 

 

3.給与ファクタリングに関する東京地判令和2年3月24日

 

本裁判例(同日に同種案件について2件の判決が出ています)では、給与ファクタリングが出資法違反であるとされました。

給与ファクタリングは、形式的には給与債権の買取り(債権譲渡)であり、金銭消費貸借契約ではありません。しかし裁判所は、以下の解釈を前提としたうえで、給与ファクタリングの仕組み全体を実質的に評価すれば、ファクタリング業者による金銭の交付は出資法・貸金業法にいう「貸付け」に該当すると判断しています。

 

金銭消費貸借契約とは異なる種類の契約方法が用いられている場合であっても,金銭の交付と返還約束を主たる内容とするもの,すなわち,契約の一方当事者の資金需要に応えるため,一定期間利用後の返済を約して他方当事者が資金を融通することを主目的とし,経済的に貸付けと同様の機能を有する契約に基づく金銭の交付については,前記各条の「これらに類する方法」に該当するというべきである。

 

 

4.私見

 

上記裁判例と同様に考えるならば、「取引名目が売買契約であれば出資法・貸金業法違反ではない」と単純に言い切ることはできません。重要なのは、対象となる取引の実質(その目的及び機能)が商品等の購入にあるのか、それともキャッシュバック名目での資金の融通にあるのかです。

 

売買契約である以上、実際のケースでは、業者から買主に何らかの商品・役務が提供されているものと思われます。

ただし、たとえ現実に商品・役務が提供されている(形式的には売買の要素を満たす)場合であっても、それが売買代金に見合った価値を有していないなど具体的な取引の事情によっては、これを「貸付け」と評価できるケースもあり得るように思われます(最判平成5年7月20日民集169号291頁参照)。

 

後払い現金化については大阪で集団訴訟が提起されたとの報道があり、今後の展開が注目されます。

 

 

5.追記

 

後払い現金化について、2021年6月16日付けで、金融庁から注意喚起がなされています。

https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/cashing_chuui.html

 

また、2021年6月25日付けで、日本弁護士連合会からも会長声明が出されました。

https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210625_2.html