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異議申立てのすすめ【交通事故】

非該当と14級では示談金に200万円の差がつくことも


治療終了後に症状が残存した場合、自賠責保険を通じて後遺障害の等級認定を受けることになります。むち打ち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)のケースでは、局部の神経症状として、14級9号または12級13号が認定される可能性があります。

むち打ちで14級9号が認定されると、後遺障害慰謝料として110万円(裁判基準)に加え、年収の20%強の逸失利益が認められるケースが多いです。

年収450万円の人であれば、非該当と14級とで、110万円+90万円強=200万円強の差が生じ得ます。さらに、主婦(夫)の人については、非該当と14級とでは休業損害の認定額も変わってくる傾向にあります。

非該当の結果は争うことができる


後遺症を自覚しながら非該当になってしまった場合等には、異議申立てという手続によって、認定結果を争うことができます。異議申立ては原認定をした自賠責に行いますが、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構という機関に事案を持ち込み(紛争処理申請)、後遺障害について同機関の判断を仰ぐ方法もあります。自賠責に対する異議申立ては何度でもできますが、紛争処理制度については一度きりです。


私の主観になりますが、異議申立てに比べて、紛争処理制度の方がより厳密かつ慎重な審査を受けることができるメリットを感じる反面、申請のやり直しが効かないため、安易に利用することには躊躇を覚えることが少なくありません。そのため、当事務所で後遺障害認定を争う場合、まず異議申立てを検討することがほとんどです。


むち打ちでの異議申立てのポイント


むち打ちでの異議申立て(14級の獲得)のポイントは、大きく分けて、①画像所見、②神経学的検査、③治療経過などの周辺事情の3つだと考えます。


1.画像所見

画像とは、レントゲン(XP)とMRIを指します。

一般に、後遺障害の対象となる「神経症状」は神経根や脊髄の圧迫によって発生すると考えられています。レントゲン(XP)やMRIでは、症状の原因となり得る骨折等がないか、脊柱管や椎間口が狭くなっていないか、椎間板が変形していないかといった事情を確認することができます。


なお、脊柱管・椎間口の狭窄、椎間板の変性は年齢とともに誰にでも起こります。そのためか、後遺障害診断書の中には、こうした変性がほとんど言及されていないものも少なくありません。

しかし、14級9号を獲得するという視点でいえば、こうした経年変化も被害者にとって有利な事情になる場合があると考えます。14級9号は、自覚症状が医学的に説明できていると評価されれば認定の余地があります。経年による変性も、事案によっては、ご本人に(事故をきっかけに)神経症状が発症しても不思議ではない状態があったという1つの証拠になり得るというのが私の見解です。


2.神経学的検査

むち打ちの場合に特に重要なのが、①筋萎縮検査、②深部腱反射、③神経根誘発テストの3つです。神経根誘発テストは、頚部神経についてはジャクソンテストとスパーリングテスト腰部神経についてはラセーグテスト、SLRテスト、FNSテストが特に重要となります。

実務上、後遺障害診断書に神経学的検査の結果が一切書かれていないケースが見受けられます。検査結果に異常がないため記載が省略されているのであれば問題ないのですが、中にはそもそも検査自体が実施されていない場合があるため注意が必要です。このようなケースでは、通院先のカルテを取り寄せることが大切になってきます。


3.治療経過などの周辺事情

14級9号を獲得するうえで軽視できないのが、治療経過や症状の推移といった周辺事情です。

どのような症状が、いつから出現したのか。ご本人の自覚症状に対して主治医の先生がどのような治療を行い、どのような効果があったのか。通院頻度や期間はどの程度か。

こうした事情は、画像所見や神経学的検査と相俟って、ご本人の主訴の信用性を補強する効果が期待できます。当事務所では、カルテ等の記載内容を引用したり、ご本人の陳述書を作成したりといった方法で立証を行うことが多いです。

この記事を書いた弁護士について


私は、浜松市を拠点として、交通事故をはじめとする様々な法律問題を取り扱っています。ご自身の保険に弁護士特約が付帯されているお客様はもちろん、弁護士特約がないお客様でも安心の費用設定になっておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

また、当事務所で手掛けた異議申立ての一例についても、ぜひご覧下さい。