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事故相手が無保険だった場合【交通事故】

被害者側のリスク


相手方が無保険だった場合、被害者には次のリスクがあります。

  • 相手方に賠償金を支払う資力ない(回収リスク)
  • 相手方本人と交渉する必要がある


通常の交通事故では、加害者側の交渉は任意保険会社が担当するので、(賠償額の交渉は必要ですが)話し合いや治療費の精算それ自体はスムーズに進むケースがほとんです。

しかし、相手方が任意保険に加入していない場合、被害者は相手方本人と直接交渉する必要が生じます。業務として交渉を担当する保険会社とは違い、相手方本人はどのような年齢・性格の方か分かりませんし、賠償に関する知識・経験がないことが多いでしょうから、話し合いが難航しやすい傾向があります。


また、自動車の修理代や治療費、慰謝料などが高額になった場合、相手方に賠償金を支払うだけの資力がない可能性もあります。


対処法① ご自身の任意保険を使う


第一の対処法は、ご自身の任意保険を使うことです。

車両保険に入っていれば、物損についてはご自身の保険から補償が受けられます。また、人身傷害保険を使うことができれば、治療費や休業損害に加え、慰謝料や後遺障害などについても相当程度の支払いを受けることが可能です。さらに、搭乗者傷害保険に入っている場合、通院日数などに応じて一定額のお金を受け取ることができます。


対処法② 運行供用者責任等を検討


たとえば、事故車両が運転者本人の所有物ではなく、親や友人から借りていた物等であった場合、原則としてその親や友人に対しても損害賠償請求が可能です。これを運行供用者責任といいます。


請求相手が増えれば回収リスクも小さくなりますし、貸主に迷惑を掛けたくないとの心理から、相手方本人の態度が軟化するケースもあり得ます。


対処法③ 労災保険を使う


事故が就労中または通勤中である場合、労災保険が使えないか検討してみてください。労災保険が使えれば、治療費や休業損害に加えて後遺障害の補償が受けられます。


ただし、労災で補償される休業損害は60%(プラス特別支給金として20%)であるほか、後遺障害の補償も民事の賠償金には及びません。また、労災では慰謝料が補償されない点にも注意が必要です。


対処法④ 相手方自賠責への被害者請求


被害者は、相手方を通すことなく、相手方が加入している自賠責保険に対して治療費、休業損害、慰謝料などを直接請求することができます。これを被害者請求(16条請求)といいます。


ただし、自賠責は交通事故の人身被害を最低限補償するための強制保険であり、傷害部分(治療期間中に発生した治療費、交通費、休業損害及び慰謝料など)については120万円が上限となります。

加えて、後遺障害についても、支払われる金額は民事の賠償額のごく一部です。


ただし、自賠責保険においては過失相殺が限定されているほか、逸失利益の算定も独自の基準が用いられるケースもあるため、事案によっては民事の賠償額と同等以上の補償を受けられることもあります。

対処法⑤ 弁護士に請求を依頼する


①③④は補償を受ける方法として効果的ですが、民事の賠償金を全額穴埋めするには足りない場合も少なくありません。加えて、ご自身のケースにおいて①~④のいずれが適切なのかを判断すること自体が簡単ではありませんし、手続を行う際にも相応の知識と労力が必要です。


したがって、相手方無保険の交通事故については、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。相手方本人以外から回収する方法はないか吟味・実践したうえ、ご自身の損害保険や労災保険・相手方の自賠責では不足する部分について、相手方本人または運行供用者等への請求を行います。


治療には健康保険を利用する


相手方無保険(かつ労災でない)の場合、第三者行為による傷病届を出したうえで、治療には健康保険を使うようにしましょう。

自由診療の治療は高額であるため、自賠責の傷害部分の枠(120万円)では慰謝料等が回収できなくなってしまうおそれがあります。また、無保険の相手方には回収リスクがあるため、たとえ無過失の事案であっても、損害額そのものを小さくしておくに越したことはありません。