ブログ

期限の利益喪失条項【契約書レビュー・ひな形あり】

契約書のひな形を見ると、以下のような条項をよく見かけるかと思います。

  • 1.甲又は乙は、当事者の一方が本契約の条項に違反した場合、相手方の書面による通知により、相手方に対する一切の債務について期限の利益を喪失し、その時点で負担している債務を直ちに相手方に弁済しなければならない。
  • 2.甲又は乙について、次の各号のいずれかに該当する事由が生じたときは、相手方からの何らの催告がなくとも、当然に、相手方に対する一切の債務について期限の利益を喪失し、その時点で負担している債務を直ちに相手方に弁済しなければならない。
  •  ⑴ 監督官庁より営業許可の取消し、停止等の処分を受けたとき
  •  ⑵ 支払停止若しくは支払不能に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき
  •  ⑶ 破産、民事再生、会社更生手続又は特別清算の申立てがあったとき
  •  ⑷ 第三者より差押え、仮差押、仮処分若しくは競売の申立てを受け、又は公租公課の滞納処分を受けたとき
  •  ⑸ 資産又は信用状態に重大な変化が生じたとき
  •  ⑹ 事業を停止したとき、又は解散の決議をしたとき
  •  ⑺ その他、前各号に準ずる事態が生じたとき


こうした条項を「期限の利益喪失条項」といいます。

期限の利益喪失条項のメリット


期限の利益とは、債務者において、約束の期限が到来するまで債務を弁済しなくてよいという利益をいいます。


たとえば、末日締め翌月末払いの取引について、2月1日に商品を購入した場合、買主としては3月末日までに代金を支払えばよいことになります。別の言い方をすれば、3月末日以前に売主から代金を請求された場合であっても、買主は期限までは支払いを拒否しても何らのペナルティもありません。


しかし、債務者の経済状態が悪化した場合にまで上記ルールに縛られてしまうとすれば、債権者としてはたまったものではありません。

そこで、一定の事由が発生した場合に債務者の期限の利益を奪うための条項が期限の利益喪失条項です。本条項によって期限の利益が喪失すれば、債権者は直ちに債務者に弁済を請求することができます。


期限の利益の喪失については、民法第137条でも一定の手当がなされています。しかし、同条の喪失事由は極めて限定的であるため、契約書において冒頭のような期限の利益喪失条項を入れておくことは必須というべきです。


リーガルチェックのポイント


契約書のチェックにおいては、まず期限の利益喪失条項が入っているかを確認しましょう。


なお、期限の利益喪失条項には、①喪失に先立って通知が必要な場合、②通知なく当然に期限の利益が喪失する場合の2パターンが書き分けられているのが通常です。

一般に、倒産が懸念される場合など重大な事由については②となりますが、債権者の立場からすれば、こうした事由が出来る限りたくさん列挙されていた方が安心といえます。一方、債務者の立場から見れば、過剰と思われる喪失事由については修正を提案するのが好ましい対応といえます。


浜松の企業法務なら鈴木・大和田法律事務所


当事務所は、浜松市を中心に、地元企業様の法務を多数取り扱っております。

顧問先様につきましては、契約書のリーガルチェックを随時無料で承っておりますので、ご興味のある企業様はお気軽にお問い合わせください。