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解除条項【契約書レビュー・ひな形あり】

契約書のひな形では、前回解説した【期限の利益喪失条項】とよく似た文言の解除条項というものが定められていることが一般的です。


たとえば、以下のような条項です。

  • 1.甲又は乙は、相手方について次の各号のいずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要せず、直ちに、本契約又は個別契約の全部又は一部を解除することができる。
  •  ⑴ 監督官庁より営業許可の取消し、停止等の処分を受けたとき 
  •  ⑵ 支払停止若しくは支払不能に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りになったとき
  •  ⑶ 破産、民事再生、会社更生手続又は特別清算の申立てがあったとき
  •  ⑷ 第三者より差押え、仮差押、仮処分若しくは競売の申立てを受け、又は公租公課の滞納処分を受けたとき
  •  ⑸ 資産又は信用状態に重大な変化が生じたとき
  •  ⑹ 事業を停止したとき、又は解散の決議をしたとき
  •  ⑺ その他、前各号に準ずる事態が生じたとき
  • 2.甲又は乙は、相手方が本契約の各条項に違反し、相当の期間を定めて催告したにもかかわらず是正しないときは、本契約の全部又は一部を解除することができる。


解除条項の意味


期限の利益喪失条項は、【取引先の信用悪化時における債権回収】を狙った条項でした。

今回の解除条項も取引先の信用悪化に備えた条項なのですが、その意図は契約関係からの離脱にあります。


取引先の信用が悪化した場合、事実上、相手方における債務の履行を期待することは困難です。

しかし、契約が有効である限り、このような状況下においても当事者は契約に拘束され、互いに所定の義務を果たさなければなりません

このような不合理から契約当事者を解放することが、解除条項の目的です。

契約を解除すれば、納品予定だった商品の出荷を中止したり、納品済みの商品について返還を請求することが可能となります。

なお、契約の解除(法定解除)については民法でも規定があるのですが、たとえば「債務の全部の履行が不能であるとき」(542条1項1号)など状況が限定されており、およそ十分ではありません。そのため、契約書において解除条項をきちんと定めておくことが重要となります。

リーガルチェックのポイント


期限の利益喪失条項と解除条項はセットで入れておきましょう

解除条項と期限の利益喪失条項は、文言としてはよく似ていますが、効果としてはまったくの別物です。実際に契約書をチェックしていると、解除条項と期限の利益喪失条項のうち片方しか入っていないものを複数回見たことがあります。
両方の条項がきちんと入っているか、この点をまずはチェックしてみてください。

次に、期限の利益喪失条項と同様、列挙されている解除事由が合理的なリスクを想定したものになっているかを検討してみてください。

解除条項に列挙すべき事由は、期限の利益喪失条項と同様で構いません。その場合、冒頭のサンプルの第1項で「次の各号のいずれか」とあるのを「第●条●項【期限の利益喪失条項の当然喪失を定めた条項数】各号」と記載すれば、重複的な記載を避けることができます。


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